グループNews

2016年7月1日
プロジェクト課題「乱れた構造がもたらす機能発現のメカニズム」の2016B~2017B期のビームタイム申請を行い、JAEA研究課題諮問委員会・CROSS開発課題諮問委員会によりレビューを受けました
2016年6月某日
J-PARC/MLFに不規則系物質研究グループ(リーダー 川北至信)を立ち上げました

グループ研究トピックス

プロトン・イオン機能性物質の構造とダイナミクス プロジェクト概要

前身となるプロジェクト「プロトン・イオン機能性物質の構造とダイナミクス」では、構造不規則系物質研究Grの「特殊環境下にある機能性物質の異常拡散」計画と単結晶構造解析Gr.の「プロトン機能物質の構造物性」計画が合流することで、ユニークな研究母体を形成することができた。水素結合ネットワーク、機能発現にキーとなる水素の役割、単結晶を用いたイオンの異常拡散の機構解明といったテーマに対し、J-PARC・MLFの中性子実験装置の利用を念頭に、光励起や外場印加など物質をアクティブにコントロールした測定"active measurements"の技術開発や、結晶解析に不規則性の概念を取り込んだ新しい解析手法の確立を目指して、研究を行った。実時間・実空間解析への展開、in situ単結晶育成測定技術の開発、transient measurementなど、現行プロジェクトの種となる技術開発に着手することができた。

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分子液体の時空相関関数

プロジェクトでは結晶性物質の機能発現にキーとなるランダムネスに焦点を当て、時空相関関数、動的相関関数などを用いた理解を進めようとしている。その準備段階として、種々の分子性液体についてその時空相関関数の性質を理解するための研究を進めている。

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超イオン伝導体およびその溶融状態におけるイオンの異常拡散

貴金属イオンを可動イオンとするAgI、CuI、Ag2Seなどの超イオン伝導体は、溶融相においても貴金属イオンがアニオンに比べて数倍速い拡散をしていることが分かってきており、この時生じる不均質性にこそ超イオン伝導相が発現する根本的なメカニズムが隠されていると考えている。こうした超イオン伝導体もしくは超イオン伝導メルトにおけるイオンの異常拡散の本質的理解をQENS、SANSなどにより進めている。

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超イオン伝導体およびその溶融状態におけるイオンの異常拡散

貴金属イオンを可動イオンとするAgI、CuI、Ag2Seなどの超イオン伝導体は、溶融相においても貴金属イオンがアニオンに比べて数倍速い拡散をしていることが分かってきており、この時生じる不均質性にこそ超イオン伝導相が発現する根本的なメカニズムが隠されていると考えている。こうした超イオン伝導体もしくは超イオン伝導メルトにおけるイオンの異常拡散の本質的理解をQENS、SANSなどにより進めている。

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超イオン伝導体単結晶を用いたイオンダイナミクスの研究

簡単な構造を持つ貴金属ハライドなどの超イオン伝導体は、室温からの昇温の際、超イオン伝導相に転移する際に大きな体積変化を伴って一次転移するため、単結晶を維持することができない。そのため溶融相から単結晶育成をin situで行い、そのまま中性子散乱実験を行うための試料スティックを開発しようとしている。これにより、単結晶を用いたイオン・ダイナミクスの研究を進める。また結晶性中のランダム性を解析する手段としてコヒーレント動的相関関数の研究を進めている。

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熱電材料の構造とダイナミクス

熱電材料として優れた性能は、金属・半導体など電子伝導があり、かつ熱伝導がガラスのように低い物質によって得られる。我々のグループでは、熱電材料の低い熱伝導がどのようなメカニズムで生じているかを構造解析およびダイナミクス観測によって調べている。クラスレート化合物は、格子が作る籠の中に包摂された原子や分子が非調和ポテンシャルの上をラットリングすることで、熱伝導を抑制している。超イオン伝導体の中にも熱電材料として有望な物質が見つかっている。可動イオンが二次元の層状構造を有する系では、この層内の不規則性によりフォノンが散乱され低い熱伝導を実現している。このように、結晶格子の中に、原子や分子の運動を自由度としてもつ系は、超イオン伝導体と同様、乱れが機能発現に大きく関与する物質として、その発現メカニズムの解明が待たれている。

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リラクサーのドメイン構造と巨大応答機構の解明

わずかな外場で非常に大きな誘電・圧電応答を示すリラクサー強誘電体や超巨大磁気抵抗現象を示すマンガン酸化物ではナノスケールの不均一なドメイン構造が共通して観測される。こうしたドメイン構造は、自己相似的な階層構造をメゾスケールにまで拡げている可能性がある。こうしたドメイン構造のダイナミクスを中性子により捉え、巨大応答の発現機構の解明を目的に研究を進めている。

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グループメンバー

川北 至信
(かわきた ゆきのぶ)
リーダー

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
サブリーダー

鈴谷 賢太郎
(すずや けんたろう)

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
研究主幹

鬼柳 亮嗣
(きやなぎ りょうじ)

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
研究副主幹

大原 高志
(おおはら たかし)

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
研究主幹

川崎 卓郎
(かわさき たくろう)

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
研究員

柴田 薫
(しばた かおる)

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
研究副主幹

稲村 泰弘
(いなむら やすひろ)

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
研究副主幹

菊地 龍弥
(きくち たつや)

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
研究副主幹

坂口 佳史
(さかぐち よしふみ)

総合科学研究機構
中性子科学センター 研究開発部
副主任研究員

松浦 直人
(まつうら まさと)

総合科学研究機構
中性子科学センター 研究開発部
副主任研究員

大友 季哉
(おおとも としや)

高エネルギー加速器研究機構
物質構造科学研究所
教授

花島 隆泰
(はなしま たかやす)

総合科学研究機構
中性子科学センター 研究開発部
研究員

米村 雅雄
(よねむら まさお)

高エネルギー加速器研究機構
物質構造科学研究所
准教授

Bing Li
(リ ビン)

日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン
中性子利用セクション
博士研究員

グループ研究実績

~最新の研究業績~

"Processes of silver photodiffusion into Ge-chalcogenide probed by neutron reflectivity technique" Y. Sakaguchi, H. Asaoka, Y. Uozumi, Y. Kawakita, T. Ito, M. Kubota, D. Yamazaki, K. Soyama, G. Sheoran and M. Mitkova; Phys. Status Solidi A, 1-10 (2016)/ DOI 10.1002/pssa.201533037
Local structure of room-temperature superionic Ag-GeSe3 glasses" J.R. Stellhorn, S. Hosokawa, Y. Kawakita, D. Gies, W.-C. Pilgrim, K. Hayashi, K. Ohoyama, N. Blanc, N. Boudet; J. Non-Cryst. Solids, 431 (2016) 68-71
"Direct Observation of Fast Lithium-Ion Diffusion in a Superionic Conductor: Li7P3S11 metastable crystal" K. Mori, K. Enjuji, S. Murata, K. Shibata, Y. Kawakita, T. Yamada, M. Yonemura, Y. Onodera and T. Fukunaga; Phys. Rev. Applied 4 (2015) 054008 (6 pages)
"Phase transition and internal crystal structure of superionic conductor, Rb3-xKxH(SeO4)2" R. Kiyanagi, Y. Matsuo, T. Ohhara, T. Kawasaki, K. Oikawa, K. Kaneko, I. Tamura, T. Hanashima, K. Munakata, A. Nakao and Y. Kawakita; JPS Conf. Proc. 8 (2015), 031012 (6 pages)
"Two Low-Energy Excitations in Superionic Conductors of RbAg4I5 and KAg4I5" S. Tahara, Y. Kawakita, M. Nakamura, H. Shimakura, T. Kikuchi, Y. Inamura, K. Nakajima, S. Ohira-Kawamura, T. Sunagawa and T. Fukami" JPS Conf. Proc. 8 (2015), 031008 (6 pages)
"Oscillating Radial Collimators for the Chopper Spectrometers at MLF in J-PARC" M. Nakamura, Y. Kawakita, W. Kambara, K. Aoyama, R. Kajimoto, K. Nakajima, S. Ohira-Kawamura, K. Ikeuchi, T. Kikuchi, Y. Inamura, K. Iida, K. Kamazawa, M. Ishikado; JPS Conf. Proc. 8 (2015), 036011 (6 pages)
"Studies of silver photodiffusion dynamics in Ag/GexS1-x(x=0.2 and 0.4) films using neutron reflectometry" Y. Sakaguchi, H. Asaoka, Y. Uozumi, Y. Kawakita, T. Ito, M. Kubota, D. Yamazaki, K. Soyama, M. Ailavajhala, M. R. Latif and M. Mitokova; Can. J. Phys. 92 (2014) 654-658
"Structure and dynamics of solid electrolyte malies (LiI)0.3(LiPO3)0.7" E. Kartini, M. Nakamura, M. Arai, Y. Inamura, K. Nakajima, T. Maksum, W. Hoggowiranto and T.Y.S.P. Putra Solid State Ionics 262 (2014) 833--836.
"Mode-distribution analysis of quasielastic neutron scattering and application to liquid water; T. Kikuchi, K. Nakajima, S. Ohira-Kawamura, Y. Inamura, O. Yamamuro, M. Kofu, Y. Kawakita, K. Suzuya, M. Nakamura and M. Arai; Phys. Rev. E 87 (2013) 062314 (8pp)

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